須田研究室では,固体が関与する界面での電荷移動反応を制御することによって,効率の高いエネルギー及び材料やシステムの開発を行っています。

H2 + O2- → H2O + 2 e

1/2 O2 + 2 e → O2-

4OH → 2 H2O + O2 + 4e

4H2O + 4e → 2H2 + 4OH

Ce3+ → Ce4+ + e

Si-O + e → Si-OH + 2OH

Mg → Mg2+ + 2 e

2 H2O + 2 e → H2 + 2OH


  • 固体酸化物形燃料電池 Solid Oxide Fuel Cell

SOFCの構造と作動原理

固体酸化物形燃料電池(SOFC)は,水素だけでなく都市ガスやバイオガスなど多くの種類の燃料ガスを用いて高い効率で発電できるなど多くのメリットがあります。そのため,家庭用高効率発電システムとして期待されていますが,普及のためには更なる高効率化,省スペース化,低コスト化などが課題とされています。

そこで現在,以下の4つの研究に取り組んでいます。

  • 空気極材料の耐熱性向上メカニズム

作製したSOFC単セル

薄膜電解質を用いることでセル特性を大きく改善できる電極支持セルを用いるためには,電極との共焼結が不可欠となります。

そこで,空気極材料の耐熱性改善燃料電池の高効率化および低コスト化に必要となる、一体焼結を可能とする耐熱性に優れた空気極材料の開発を目指して,最適な電解質と電極の界面構築のための材料開発を行っています。

単セルの断面

須田研究室では電極,電解質材料の合成から単セルの作製,評価まで行っています。

  • Ni/YSZ燃料極材料の最適化

SOFC燃料極の模式図

燃料極では,酸化物イオンと電子と燃料の三相が反応する場(三相界面)の最適なバランスで構築することが重要です。

燃料極の微細構造

燃料極としての組成に加えて,造孔材の形状や大きさを制御することによって,十分なガス供給と水蒸気の排出など最適な多孔質構造の構築に向けた検討を進めています。

  • 高温用結晶性ガスシール材の開発

燃料と空気との混合を防ぐガスシール材はSOFCにとって必要不可欠な部材です。現在SOFCに用いられているガスシール材は主にガラス系材料が含まれています。そのため,熱サイクルに対する耐久性に問題があります。そこで,熱サイクルに対する耐久性の高い新たな高温用結晶性ガスシール材の開発を進めています。

  • DFFCセルの開発

DFFCの模式図

SOFCを起動するときは,セルやスタック温度を高温にするため、燃料を燃焼させます。その燃焼に使う火炎も電気に変換することを検討しています。燃料極支持型セルを作製し,直接火炎型燃料電池用(DFFC)として用いることを検討しています。また,火炎にマイクロフレームアレイ(MFA)を用いて,DFFCの発電メカニズムの解明を目指しています。

  • 薄膜積層型SOFC

薄膜積層型SOFC

従来を上回る高体積出力密度を可能とする新たなコンセプトに基づくSOFC「薄膜積層型SOFC」をFCO Power株式会社と共同開発しています。


  • 海水電解によるCO2の持続的固定化 Sustainable CO2 Storage by Seawater Electrolysis

海水を利用したCO2固定化方法

我々は,地球環境に優しく,低エネルギーで効率よく,かつ持続的にCO2を固定化する方法として,海水中の石灰化反応(例:サンゴ)に着目しています。大気中のCO2を海水中でCaCO3として固定化するための,材料やシステム,運転条件などについて検討しています。

成長したアラゴナイト(CaCO3)結晶

須田研究室では,海中における持続的なCaCO3の固定化方法として,海水中での電気分解反応を用いています。

海水電解によるCaCO3析出の様子

電極材料やシステム設計を最適化することによって効率よくCO2を固定化できることが分かってきました。

CO2固定化評価装置の外観

海水電解によるCaCO3の固定化と大気中のCO2濃度変化を定量的に評価することで材料やシステムの最適化を進めています。


  • 化学機械研磨による超平滑表面 Advanced Smooth Surface by Chemical Mechanical Polishing

CMPにより得られた超平滑サファイア基板

ガラス,サファイヤ,SiCやシリコン半導体に至るまで材料を超平滑に加工する技術はさまざまな場面で使われています。例えば,ガラスでは,数0.5~1ミクロンの粒子を使って研磨することで,表面粗さが0.5~1ナノメートルの平滑性を実現できます。なぜ,なぜ数ミクロンの粒子が原子レベルの平滑性を実現できるかのメカニズムについては,砥粒(研磨粒子)とガラスがこすれる際に,化学反応を起こすためと考えられています。この化学作用を使った研磨を化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing, CMP)と言われています。

砥粒/ガラス界面のCMPによる電荷移動の模式図

これらの化学研磨には,砥粒やスラリーと研磨基材間での電子授受が大きな役割を担っていることが分かってきました。そこで,須田研究室では,研磨特性の大幅な改善を目指して,研磨過程における研磨材/水/基材界面の電気特性の評価を行ない化学研磨メカニズムの解明について研究を 行っています。


  • 次世代カプセル内視鏡向け水素燃料製造システム    H2 Generation System for Advanced Capsule Endoscope

次世代カプセル内視鏡向け水素燃料製造システムの概念図

現在使用されているカプセル内視鏡は,消化器官を観察する機能だけですが,将来,pHなどのセンシング,検体サンプリング,さらに施術などが可能となれば,QOLの大幅な改善が期待できます。ところが,現在内蔵されている蓄電池では,エネルギー体積密度が小さいために,これらの機能をもつデバイスを動かすことができません。そこで,須田研究室では,胃の中で発生させた水素により電力を生み出しでデバイスを作動させるシステムを検討しています。

模擬胃液中で水素が発生している様子

これまでに,胃液を模擬した液体(模擬胃液)で局所電池を構築することによって効率よく水素を発生できることが分かりました。現在は,これらの電極材料や局所電池としての構造の最適化について検討を進めています。

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